醜く、儚く、時に美しく。
絡み合う三色の耀き。
互いを想い、時に憎しみ合うその様は、立ち昇っていく気泡の如く。
。。0 ○ 越天楽 ○ 0 。 。0 。。 。
<黄は閃く霹靂のやうに>
・・・この“血”ってヤツは、全く反吐が出そうだ。
血なんて、俺の身体に流れていなければ良かった。
俺が欲しいのは、そんなドロドロした澱んだものじゃない。
心の大らかさと云う潤いの泉。
慈愛に満ちた瞳を持つ、キミだけなのに。
判ってる。
判りきってる。
俺が、キミを想ってはいけない、なんてことは。
でも、この胸の慟哭は・・・どうしても、抑えることは出来なくて。
だから、キミの手を引いて、腕の中に閉じ込めたんだ。
その時、キミは眉を顰めて、「翼は卑怯だね」と呟いた。
息を潜めて、口唇を口唇で啄ばんで。
誰にも聞こえないように、誰にも見られないように。
密やかに、部屋の隅で、許されぬ愛を囁き合って。
非道徳だとは判っていても、俺は幸せだった。
このまま、ずうっとこのままで、二人で朽ちていってもいいと。
それも長くは続かない。
小さな姿に身を窶した天空聖者は、俺なんかよりも容易く、キミの心を攫っていった。
その揺るぎ無い瞳の力も、暖かな口唇も、慈しみを孕んだ言葉も。
―――悔しかった。
悔しくて悔しくて、俺の中に、凄まじい憎悪の稲光が迸った気がした。
<金は煌く宝玉と憶ゆ>
厚い雲の中で怒り、身を滾らせる霹と、それを緩やかに包む河の流れが或る。
何処か似ているようで、時に対照的な二人を見ていて、思う。
―――まるで、抜身の刃と、それを収める為の鞘のようだ。
冷静に見える黄色の魔術師は、心の中に熱い焔を秘めている。
かくいう彼の弟は、いつだって朱雀のように先陣を駆け抜けていくが、兄の翼は・・・そうではない。
熾火の如く、静かに、ゆらゆらと胸に仕舞ってあるもの。
一度燃え上がれば、己の身をも焦がしかねない。
否、水を司る彼女が傍に居れば。
彼の怒りに火が灯ることは無いだろう。
そんな二人を眼に映すと、胸にぽっかりと孔が空きそうになる。
僕には見えない絆が在る。
僕が知らない過去が在る。
彼女の心に、僕が入り込めない空間が在る。
何故。
自身に問い掛けても、答など、在る筈も無い。
だから、僕は。
遠慮会釈も無い。
仮令、怒号を含んだ雷鳴が轟こうとも。
―――僕は退かない。
キミと云う、たった一つの輝石を手に入れるまでは。
<青は澄み切る清流の如し>
右方には、闇に溶けそうになる私を、煌々と照らし出してくれる霹が。
逆方には、私の頭に何度も何度も喚び掛ける、燦々と輝く日輪が。
「麗姉、あんなヤツなんか見るな。俺だけを見ておけばいい」
「麗、僕の気持ちは・・・これまでも、これからも、ずっと変わらないよ」
二人の視線が、私の臓腑を掴む。
絞り出された吐息は、針のように鋭くて、氷みたいに冷たく、硬い。
翼、こんなお姉ちゃんでごめんね・・・
本当は、勇気を出して、翼の手を振り切るべきだった。
けど、出来なかった。
それは、翼の気持ちが、今まで生きてきた中で、一番嬉しかったから。
何かがぐるぐると絡まっていた心が、瞬く間に綻んだ気がしたから。
対して、ヒカル先生は、凄く強引で。
私をからかっては、柔らかい微笑を湛えている。
それを見る度に思う、「なんでこんな人に口唇をあげてしまったのか」って。
でも、気付いてしまった。
ヒカル先生の貌を見ていたら、自分の胸の中に淡い熱が宿っていることに。
「麗姉!」
「麗!」
嗚呼、私は。
私は、我侭です。
―――神様、私は、双方を想うことは赦されないのですか。
今日と云う日から逃げられるのなら。
私が選んできた路を、消すことが出来るのならば。
どうか、頭の中で息づく記憶を削り取って。
さもなくば、時が過ぎ行くままに、私は心を流していかねばならないのですか・・・
+++FIN+++
<AFTER WORD -後書->
いつもと違う感じで書いてみたわけですが、こーゆーのはムズいねしかし!<なんかいつもと同じ感想ですね
何故タイトルが越天楽なのか・・・
実は、本来の越天楽の意味とは全く関係無いんですよ、本編は(w
この小話は、わたくしが大好きなアーケード音ゲー・ポップンミュージックの11に収録されてた、
インテリ系コンポーザーと名高いQ-Mex氏の作品「E-TEN-RAKU」のロングヴァージョンを聞きながら書いたもんでして、
途中のピアノソロで、黄青金の三人が背中を合わせて花吹雪の中に立っているというイメージ(解り辛い)が湧いたんで、
そのまま拝借致しました・・・やー、この曲最高だよ!
ちなみに、歌は入ってなくて、演奏のみのインスト曲なんですけどね。
まぁ、要するに、アレですよ。
近親恋愛がイケナイことだと分かってる翼ちん、クールを装ってるけど、裏では次女にいろいろ手を出してると良い。
で、心の中では、麗ちんを誑かしてる奔放なてんてーを、密かに憎んでいるとなおベター。
当のてんてーは、そんな翼ちんのことはお見通しなんだけど、身を引く気はさらさら無い。
二人に板ばさみにされてオロオロしてる麗ちん、まったくモテモテだな!<なにこの意味不明テンション
自分の希望が全面に押し出されて、何が言いたいのか良くわかんないものになってしまい・・・orz
短くっても難産でしたよ、この小話・・・
話として捉えず、それぞれのイメージとして、軽く読んでください。
20話直後くらいだと思って!<えらい前の話やな
やっぱ向いてねーなー、情緒系。
(2005/09/29)
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