ECHOES
===> from pop'n music 16 PARTY CONTEMPORARY NATION 3
樹木が枯れ果て、泉も涸れ果てた大地があった。
生物の気配など、何一つ感じられない、最果ての地であった。
其処に、一つの翳が舞った。
翳は、短い棒を握って、周りを見渡す。
からからの砂漠の少し先に、小さな丘になっている場所を見つけると、
翳はひょろり、ひょろりと、風に吹かれるように動き出す。
水分が吸い尽くされた樹々の爪を潜り、砂の階段を抜け、
ささくれ立った磐棚を飛び越え、翳は小丘に降りた。
よく見ると、翳の頭には、奇妙な5つの突起があった。
翳の主は、後に、こう傳えている。
『此れは昔、“ムスリムの五行の証”だとか、“成り立ちの五大元素”と言われたことがあった。
けれど、私にとって、それは何の意味も持たぬものだ。
思想が頽れるのが風のように早く、自然が朽ちゆく様が息を吐く間もないように』
奇怪な姿をした翳は丘に立ち、棒・・・否、横笛を銜え、すう、と吸気する。
眼を瞑り、砂埃を受け、ゆっくりと身体を傾けて。
弾く。情景を。
繋ぐ。律動を。
紡ぐ。気配を。
踊る。意識を。
表す。世界を。
大気が、眼を醒ました。
笛から口を離したイマは、此処に降りた時と変わらぬ貌で、少しの感情も見せずに、丘を下り始めた。
『私には、歌も言葉も必要ない。
どんなものにも沁み渡ってゆくのは、奏でられた音だけだからさ』
―――音ではないものは、どんなにもがいても、やがては儚く消えるものだと解っているから。
『だから、私は言葉を寸断し、音で伝道させるのだ・・・この意志を、この思惟を』
気付いてくれ。
気付いてくれ。
お願いだ。
空気を、世界を、どうか、どうか。
殺さないでくれ。
目覚め始めた世界をくぐって、イマは死んだ場所へ向かって消えた。
+++FIN+++
<AFTER WORD -後書->
イマ様の緑化運動、はっじまっるよー \(^o^)/
・・・失礼しました。
ぽっぷーそみゅーじっくより、ねこまた先生のコンポラ3の妄想SS(ショートショート)をお送りしました。
ドラムンベースとか、ワールドエレクトロニカとか、ねこまた先生はいろんな曲を書いていらっしゃいますが、
その中でも、私が抜きん出て好きな楽曲が、この「ECHOES」です。
公式の曲紹介文と、この曲のイントロの暴れるようなツインドラム、静かに、緩やかに流れるメロ、
そしてラストへ向かって一気に昇華するサビのラインに魅せられて、思うがままに書いてみました。
荒野を蘇生させ、世界を再生させる神、それがイマの姿だと、勝手に想像しています。
(2008/07/28)
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